謎に包まれた雅
雅と連絡を取り始め、何度か食事にも行きました。
雅は優しく、聞き上手なので私はいつも機嫌よく喋っているのですが、不思議に思っていることがありました。
雅は夜、電話中に寝てしまいます。
「またね、おやすみ。」ではなく、「もしもーし…」と言っていつも電話を切ります。
話がつまらないのかと思いきや、毎日電話をかけてくるのです。
食事にでかけても夜10時には自宅へ送り届けられます。
高校生じゃないんですけど…。
そんなある日「付き合ってほしい。」と言われました。
好意はもっていたものの、謎の行動を聞かずして付き合えないと思い、思い切って聞いてみました。
すると予想外の答えが返ってきました。
「仕事、夜の12時からやねん。朝10時頃まで働いてる。ごめん、黙ってて。」
「えーーー⁉何で言ってくれへんかったん?」
「気ぃ遣うと思って…。」
代々継いでいる家業で今はお父さんが社長とは聞いていたけど、まさかの昼夜逆転。
私に合わせるのはどんなに大変だっただろう。
全く気づかずお喋りしていた自分が情けなくなりました。
自分を犠牲にして無理をしてくれていた雅に対し、こんな風に思ってくれる人と一緒にいたら幸せなんやろな…としみじみ感じました。
そしてお付き合いすることに。
巨大な器
ある日、大阪の阪急梅田駅近くの大きな道で、私の仕事帰りに車でピックアップしてもらう約束をしていました。
交通量の多い駐車できない場所なので、一瞬停車してもらって急いで車に乗り込まないといけないような場所です。
それなのに雅の車が到着した時、私は6車線離れた歩道で信号待ちになってしまいました。
手を振りながら私は「ごめーんっ!停められるとこあったらそこまで行くから車出して良いよー!」と電話しました。
すると雅は「かめへん、かめへん。また戻って来るからゆっくり渡ってきたらええよ。」と手を振って車を発進させました。
※「かめへん」というのは大阪弁で「構わないよ」という意味です。「かまへん」とも言います。
また戻って来るって簡単に言ってくれましたが、大阪梅田駅付近は車線も交通量も交通規制も多い。簡単には戻って来られません。
本当に申し訳ない気持ちになったのと同時に雅の器の大きさに感動しました。
いつも「かめへん、かめへん。」と笑ってくれた雅。
怒ることがないのでケンカもしませんでした。
恋愛は疲れる。
そう思っていたけど雅は違いました。
穏やかな時間が過ごせて、安心できる存在でした。
プロポーズ
お付き合いを始めてもうすぐ1年を迎えようとしていたホワイトデーのことです。
ヘリの貸切遊覧を予約をしてくれていて、賑やかな大阪の夜の街を空から観光しました。
ヘリに酔って吐く寸前でしたが(笑)、レストランで食事をし、私の自宅に送ってもらいました。
車内で少し話をしていると、なぜか雅の手がだんだん異常に汗だらけになっていったので、この後の展開を察してしまいました。
有名なビジュアルの箱を差し出し、中身は予想どおりキラキラ輝くダイヤのリング。
「ピン子のこと一生大事にする。結婚してくれますか。」
一生大事にしてもらえませんでしたが…。
こうして結婚する気ゼロだった私が、【かめへんマジック】にひっかかり、雅と結婚することになったのです。